海外との違いから見えてきた、日本のアルバム文化の魅力
この記事の内容は音声でも聞けます!↓↓↓
こんにちは、SPOBOOK担当の李です。
先日、久しぶりに中国の実家に帰省しました。そこで偶然見つけたのが、中学1年生のときの写真です。バスケットボールの新人大会が終わったあと、誰かが撮ってくれたもので、少し恥ずかしいですが、一番右に写っているのが私です。

この写真を見て、2つの点が残念に感じられました。
💦 写真を見ても、当時のことをあまり思い出せませんでした。
💦 一緒に撮ったはずの他の写真が見つからず、この1枚しか残っていませんでした。
あの時にアルバムとかでまとめたらよかったと思っていますが、中国では、スポーツアルバムはさておき、学校の卒業アルバムを作る文化がありませんでした。あくまで記念写真を1枚撮るだけくらいです。日本にこれほどまでに豊かなアルバム文化があることを知っていたときに、正直とても驚きました。そして、記録を残すことを当たり前のように楽しんでいる日本の子どもたちが、羨ましくもなりました。
では、なぜ、日本では徐々に普及されていきたスポーツアルバム文化が、中国ではないのか?と、考えました。その背景を少し深掘りしてみたいと思います。
中国でスポーツアルバムの文化が根づいていない背景には、日本とは異なる、スポーツを取り巻く環境の根本的な違いがあります。その違いは大きく分けて5つが挙げられます。
1. 部活動の文化
🇯🇵 日本
日本の学校では部活動が盛んに行われています。生徒たちは放課後、仲間とともに長期的にスポーツに取り組む環境があります。競技の技術だけでなく、礼儀やチームワーク、目標に向かって努力し続ける姿勢など、いわゆる非認知能力も育んでいきます。 このように、仲間と汗を流しながら成長していく、というプロセスそのものが思い出になり、それを形として残したいという気持ちに繋がります。
🇨🇳 中国
中国の学校では、部活動は基本的に存在しません。学歴社会なので、放課後は主に塾や自習に充てられることが多く、スポーツ活動は短期間のイベントとして行われるか、公立のスポーツ学校に委ねられるのが一般的です。 そのため、仲間と継続的にスポーツに取り組む機会が少なく、チームでの成長経歴を共有したり、記録に残したりという文化が生まれにくい環境です。
2. スポーツへの価値観
🇯🇵 日本
日本のスポーツ文化では、勝敗や結果だけでなく、目標に向かって努力する過程や、そこから得られる楽しさ、感動、絆そのものに大きな価値が置かれています。引退試合や最後の大会といった節目も大切にされ、その一連のプロセスを記録として残すことが、個人の成長やチームの歴史を尊重する姿勢につながっています。
🇨🇳 中国
中国では、スポーツにおいて結果や成績が重視される傾向が極端に強くあります。特に、全国大会での優勝や選抜試験への合格といった明確な実績が評価の中心となり、それ以外の取り組みは後回しにされがちです。そのため、成績に直結しない活動の記録や楽しかった思い出を残そうという意識が芽生えにくく、アルバムのような形で記録を残す文化が育ちにくい背景があります。
3. スポーツへ参加する機会
🇯🇵 日本
日本では、「誰もがスポーツを楽しめる」という土壌が広く根付いています。学校の部活動や地域のスポーツクラブを通じて、多くの子供たちが年齢やレベルに関わらずスポーツに触れる機会を持ちます。これにより、多様な形でスポーツの思い出が生まれ、それがアルバムとして記録される対象となります。
🇨🇳 中国
中国では、本格的にスポーツをするのは、幼少期から才能を見出され、専門の体育学校やエリート育成機関に集められた一部の子どもたちに限られる傾向があります。一般の子供が「みんなで気軽にスポーツを楽しむ」機会が比較的少ないため、多くの人にとって記録を残すほどの共通のスポーツの思い出が生まれにくいのが現状ですいです。
4. 写真・アルバムを残す習慣
🇯🇵 日本
そもそも、日本では卒業式や卒団式といった節目に学校やチーム単位でアルバムを制作する文化が強く根付いています。これは単なる記念品ではなく、友人や先生、コーチとの絆、そして共に過ごした時間への感謝を形にする大切な習慣です。高品質な撮影・編集・印刷を行う専門業者も多く存在し、アルバム制作を支える産業が確立しています。
🇨🇳 中国
中国では、写真アルバムを作る場合は人生の大きな節目に限定されることがほとんどです。学校や団体単位で、日常の活動を網羅したアルバムを制作する仕組みや習慣は稀で、写真の記録は主にデジタルデータとして個人で保存される傾向が強いです。また、高品質のアルバム製本を提供できる業者がかなり少ないのも、アルバムを作らない、アルバムを作りたくない理由の一つになります。
5. コミュニティの関与
🇯🇵 日本
日本の部活動や地域スポーツでは、保護者や地域社会が積極的に関わり、子供たちの活動を応援し、支える文化が深く根付いています。試合の応援、練習の送迎、イベントの手伝いなど、地域全体で子供の成長を見守り、その記録を共有する意識が強いです。このコミュニティの温かい眼差しが、アルバム制作の動機付けにも繋がっています。
🇨🇳 中国
中国では、スポーツ活動が教育や地域コミュニティに密接に結びついているケースは少ないです。子供のスポーツ活動は、主に専門機関の責任とされ、学校外での活動や思い出を家族全体で記録するという文化が育ちにくい環境にあります。また、日本ほど応援や贈り物文化が盛んではないことも、アルバム文化が根付かない一因と考えられます。
こうして振り返ってみると、日本のアルバム文化は、スポーツや学校生活をただの記録としてではなく、かけがえのない思い出として丁寧に残す、とても豊かな文化だと改めて感じました。
それはきっと、結果だけでなく、何かを取り組んできたプロセスや人とのつながりを大切にしてきた日本ならではの価値観が育んだものなのだと思います。
だからこそ、この文化を当たり前だと思わず、ぜひ皆さん一人ひとりが、記録を残すことそのものを大切にしてほしいと願っています。数年後、ふと手に取った一冊のアルバムが、当時の笑顔や空気を思い出させてくれる——そんな時間が、きっと人生の宝物になります。